「少年にはペニスがあるが、少女にはそれがない。
だから少女は無意識にペニスを羨ましく思うという
コンプレックスを持つようになり、
少女は自分を劣等なものとみなす。
それが『男になりたい』という願望や、
少年への復讐心を生み出し、
少年はそのような少女に怯える」
って、
以前読んだ古い精神分析学の解説書に書かれていたのだが、
フロイトの理論がベースになっているらしい。
男も女もそれぞれの身体を授かって生まれて来るのに、
どしてその結果、ペニスだけに話が回収されていくんだろう?
よくわからなかった。
むしろそれって、自分のペニスを貴重品だと思いすぎた男が、
ちょん切られる恐怖から妄想を抱いたんじゃないのかしら、
なんて思ったりもした。
それで、同時代の女性の意見も知りたいと思い、
カレン・ホーナイという女性の精神分析医の本と出会った。
ホーナイは、フロイトの理論が男性に偏っていると指摘しつつ、
けれども、完全に否定する態度はとらず、
「Aの理論は不満に思うし、考察が足りないと思うが、
Bの理論はたしかに自分が診てきた女性患者を分析したものと
合致する。この点において、フロイトの推測は正しいだろう」
という姿勢で、批判しながら、発展もさせていた。
ホーナイが研究してきた、強い劣等感を持つ女性たちの中には、
確かに子供の頃、道端で立ち小便をする男性を見たりなんかして、
「自分にはあれがない」と強烈に思った人たちもいるようだ。
でも、それが女性のすべてというわけじゃない。
性器の違いはそれぞれの性への影響はたしかにあるようだが、
男性には突き出たものがある一方で、
女性には「宿して生む」という生殖機能がある。
単に「異なる」だけで、どちらかが劣っているとか、
不利であるということはない。
ホーナイは、むしろ「繁殖力」においては、女性のほうが有利で、
男性が女性を羨望するところもあるのではと言う。
他にも女性の深層心理について、社会との関係が影響を与える面も
大きいはずだという視点で、いろんな女性の性格について分析する
論考を書いていて、面白く読んだ。
難しすぎて斜め読みになるところもすごく多いけど。
カレン・ホーナイは、長年フロイトの理論に沿って臨床した上で、
その結果から、批判的な意見を含む論文を書いたのだが、
「精神分析学の創始者たるフロイトこそ正統派」とする学者たちに
大変な衝撃を与えてしまったらしく、精神分析協会から除名された
らしい。
なんだそりゃ。
権威主義って本当に幼稚なことをするんだな。
男尊女卑じゃないか?
よりにもよって精神分析の学者たちがねえ。